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目次
利用者情報とサービス内容
私は現在、デイサービスセンターで生活相談員として勤務しています。
その中で体験したことについてお話します。
利用者様は当時要介護4の認知症を持った女性でした。
車椅子が移動手段ですが、基本的には全介助です。
少しなら言葉を発しますが、ほとんど自分の意思を伝えることはできません。
息子さん家族との同居ですが、これまで送迎に行った際、まともにご家族様にお会いしたことはありません。
朝はヘルパーが入り、帰りはお孫さんがいるものの、出迎えには来ません。
デイの職員がご自宅内に上がり、自宅奥にあるご本人様のお部屋のベッドに利用者様を寝かせて支援終了です。
家族からの要望は虐待
なんとなく、「冷たい家族だな…」と思いつつも、「息子さん夫婦は仕事があるし、お孫さんも認知症になったおばあちゃんの介護をするのは年齢的にもなかなか難しいことなのだろう」と解釈していました。
そんなある日、朝にいつも通りお迎えに行ってヘルパーからご本人様を引き継ぐとき、「ご家族様からの依頼なんですが…」と申し送りを受けました。
その内容は「本人が日中、自力でベッドから車椅子に移って自宅内を移動しているようだ。その為、帰りに本人の部屋まで送った際にその後、本人が部屋から出られないように棒等を襖のレールに置いておいてほしい」というものでした。
それがどういうことなのか、一瞬分かりませんでした。
ただ、「これは即答してはいけないもの」と思い、ヘルパーには曖昧な返事をして終わらせました。
その方を乗せてデイに向かっている最中、ずっと頭の中では「それは虐待行為に当たるのでは?それなのにヘルパーが当然のように言ってくるのか?」という思いがグルグルとしていました。
そしてデイに着き、すぐ上司に相談しました。
返答は私と同じ考えで、すぐにケアマネージャーへ連絡しました。
ケアマネージャーもご家族様からの依頼は知っていたようです。
私は「ご家族様は知らないのかもしれませんが、これは虐待になるので私たちのほうでは対応できません」とはっきりお断りさせて頂きました。
ケアマネージャーも理解を示して下さった為、うまくその旨をご家族様へ伝える流れを作って下さいました。
現在、ヘルパーやご家族様がその対応をしているのかは分かりません。
していないことを願っています。
この利用者様は、普段自分では車椅子を操作することはおろか、自力でベッドから起き上がることも難しい方のはずです。
では、なぜそのような話が出てしまったのでしょうか。
行動の原因
答えは、ケアマネージャーから聞いて分かりました。
日中、ご家族様は仕事や学校でいなく、ご自宅にはご本人様お独りの状況です。
食事もまともに摂ることができていません。
ですが、重い認知症ではあるものの、人間として本能的に空腹に耐えられずに食事を求めて動き出した可能性が高いのです。
私は愕然としました。介護職として勤め始めて数年、このような体験は初めてでした。
ご家族様を責めるつもりは一切ありません。
ご家族様はご家族様で抱えている事情がありますし、ご本人様が部屋から出ることのないようにと考えた精一杯の対応策だったのだと思っています。
ケアマネージャーであれば、ご家族様へもう在宅での介護は難しいのだと、それであれば入所等の検討を勧めることもできます。
ですが、私は単なるデイサービスの生活相談員なのであまり口出しすることはできません。
では、私にできることは何だったのでしょうか。
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職員の対応
それが実際に行なった上司への報告と、ケアマネージャーへのはっきりとした理由付けの断りの連絡だったと思っています。
又、他職員へもこのことをしっかりと伝えました。
介護業界には、必ずしも皆が介護の知識を持っているとは限りません。
全く経験もない人も入社してきます。
そういった人が私のように一人で似た場面に遭遇した際、間違って「分かりました。その対応をさせて頂きます」と返答しないよう、知識を与える義務が生活相談員にはあると思いました。
介護者は介護を必要とする高齢者を守るべき立場にあります。
その立場の人間が何の知識もない状態ではいけないと、今回の件で強く実感しました。
ましてや、この利用者様は自分の意思を明確に伝えることができません。何を考え、何を感じているのかはご本人様でさえもよくわかっていないのかもしれないのです。
ですが、「辛い」「悲しい」「嬉しい」「楽しい」といった感情を持っていることは確かです。
それは日常の介護をしている上で、しっかりと感じ取ることができます。
虐待は、したくてしている人はいないと思っています。
家族であれば尚更、自分を育ててくれた親に対して意図的にそれをしようとは思っていなく、ただ知識がなかっただけなのだと思いたいです。
それであれば、ご家族様へもきちんとした助言をしていかなければいけません。
なかなかお会いすることのできないご家族様であれば、連絡帳や電話等での手段があります。
介護者として虐待を防ぐ方法、それは確かな知識を持っていること・それを他職員にも伝えていくこと・ケアマネージャーとの連携・ご家族様の介護負担軽減のための助言や傾聴だと思います。
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