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目次
<レビー小体型認知症を知っていますか?>
認知症と聞くと、「アルツハイマーの事だな」と思う人が大半かと思いますが、実はいくつかの種類があります。
一番多いのはアルツハイマー型認知症で、全体の50~60%を占めています。大半はアルツハイマー型なので、認知症といえばアルツハイマーといった感じになっているのも、無理のない話なのかもしれません。
レビー小体型というタイプの認知症は、聞いたことがあるでしょうか?
アルツハイマー型の次に多いのがレビー小体型認知症で、約20%を占めています。
<レビー小体型認知症>
レビー小体型は、脳の神経細胞にレビー小体というたんぱく質の塊が現れて、この塊が脳の神経細胞を壊して行く疾患です。
日本国内ではおよそ50万人の患者さんがいると言われているので、アルツハイマー型だけではなく、レビー小体型認知症に関する知識も持っておく必要があるでしょう。
<レビー小体型認知症の特徴、その①:見えるはずのない物が見える>
レビー小体型認知症では、見えるはずのない物が見えてしまう「幻視」という症状が現れます。これが、大きな特徴です。
誰もいない部屋で「部屋の中に誰かいる」と訴える、犬や猫などの小動物や虫がいると言うなどの症状があります。そのため、「泥棒がいる」と近くの交番に駆け込む、というケースも少なくありません。
夜中に、「自分の布団の中に誰か入っている」などと騒ぐこともあります。
もしもあなたの身近にいる高齢者が誰もいない部屋で「誰かいる」などと頻繁に言うようになったとしたら、あなたは認知症を疑うでしょうか?
おそらく、「まだお父さんが亡くなったことを受け入れることができなくて、見えてしまうのかしら?」などと思うでしょう。霊能力が身に付いた、などと思っていたと言う人もおられるようです。
では、どうして幻視が起きるのでしょうか。
視覚認知能力が低下すると、暗い所にあるものや細かい模様などが鮮明に見えなくなってきます。
そのため、脳が少しでもはっきりと見ようとして、今までは意識することがなかった陰影や模様にまで注意が集中し過ぎてしまうようです。
このような脳の過剰な対応が、幻視に繋がっていくのだろうと考えられています。
そのうえに判断能力が低下しているので見間違いだとは思わず、見えた、確かにここに人がいた等と信じ込んでしまう傾向があるのでしょう。
<レビー小体型認知症の特徴 その②:レム睡眠行動異常>
レビー小体型認知症になると、寝ている時に大声で寝言を言ったり叫んだり、手足を動かしたりすることがあります。
レム睡眠は、夢を見ている時の睡眠状態のことをこのように呼んでいます。身体は睡眠状態で休んで筋肉は緩んでいるのに、脳は活発に働いている状態です。
しかし、レビー小体認知症があると筋肉が上手く緩まずに脳の指令が筋肉に届くため、夢に合わせて大声を発したり叫んだり、手足を動かしたりすることがあるのです。
この時点でも、認知症を疑う人はほとんどいないでしょう。
睡眠中に大声で叫んだとしても、何か悪い夢でも見たのかしら?と思うご家族が大半です。度重なると、さすがに「変だな」とは思うものの、医療機関を受診する人は滅多にいないようです。
中には医療機関を受診するのではなく「うちのおばあちゃんは変な物が見えたり夜中に叫んだりして、きっと何かに取り付かれているのだわ」と、お祓いを受けに行ったという人もおられます。
認知症と言う病気が原因だとは思えずに、何やら霊的な現象だと思ってしまうのも、無理のない話かもしれないですね。
<レビー小体型認知症の特徴 その③:パーキンソン症状>
幻視と睡眠中の大声だけでは、何らかの病気を疑って医療機関を受診する人はほとんどいないかと思いますが、パーキンソン症状が現れると、さすがに病院を受診する人は増えるでしょう。
レビー小体型認知症の3つ目の特徴として、パーキンソン病で見られるような症状が出ることがあります。
実は、パーキンソン病もレビー小体認知症も、原因はレビー小体という物質なのです。
レビー小体が脳幹に現れるのがパーキンソン病で、大脳皮質に現れるのがレビー小体型認知症です。
レビー小体認知症が進行すると、70%ほどの人にパーキンソン症状が出ると言われています。
パーキンソン病の症状には、次のようなものがあげられます。
動作が緩慢になる、静止している時のふるえ(振戦)、筋肉の強剛、立ちくらみなどの起立性低血圧、便秘やうつ症状などです。
ご家族が病院に連れて来られるきっかけとなる症状は、歩き方がおかしいとか転びそうになることが増えたなどが多いです。
パーキンソン病の際の歩行は、たどたどしい歩き方や歩幅が非常に小さい小刻みな歩き方となります。
しかし、ここでもまだ認知症を疑う人は少ないでしょう。
整形外科を受診したり、高血圧や糖尿病でお世話になっているかかりつけ医を受診するというパターンが大半です。
まだまだ認知症専門医を受診するまでは、ほど遠いと言えます。
<レビー小体型認知症の特徴 その④:変動する認知>
4つ目の特徴として、認知の変動があげられます。はっきりしている状態の時が有るかと思えば、ぼんやりしている時もあるという変動です。
1日の中で変動が見られることもあれば、数日の周期で変動が見られることもあります。
<レビー小体型認知症 その他の症状>
また、レビー小体認知症ではおよそ5割の人に、人物誤認が現れます。
人物誤認と言うのは、家族や友だちを他の人と間違って認識してしまうことです。
自分の親に娘だとは思ってもらえなくて他の人だと思われるというのは、ご家族にとってはショックでしょう。
このような症状が出てくると、さすがに認知症を疑いだす人も増えてきます。
しかし、レビー小体型認知症の場合、短期的な記憶は比較的保たれます。
<レビー小体型認知症の治療>
どんな病気であっても、早期発見・早期治療が良いということに変わりはありません。
しかし、物忘れの症状が目立たずに幻視だけが目立つ場合は、まさか認知症だとは思わないケースが大半です。
無理もない話だと思います。
どうして気が付かなかったのだろうか等と、自分を責める必要はありません。
専門医が診察しないと、一般内科の医師でも見抜くのは難しいです。
整形外科医や皮膚科医などの中には、レビー小体型認知症の存在すら知らない医師も、残念ながら何人もいます。
レビー小体型認知症は、早期発見の難しい疾患だと言えます。
しかし、診断が確定すれば幻視は比較的改善しやすいです。
幻視に関しては、服薬や環境を整えることで約9割の人が良くなっているので、その点は安心してください。
パーキンソン症状もパーキンソン病の治療薬を飲むことで、ある程度の改善は期待できます。
厄介なのは、レビー小体型認知症の人は薬に対して敏感だという点です。
薬のさじ加減が難しく、うつ病の薬や幻視を抑える抗精神病薬などを服用すると、症状が悪化してしまうこともあるのです。
服薬中に異常を感じた時は、主治医に報告・連絡・相談することが大切です。
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<幻視を少しでも防ぐためには>
幻視は夜や暗い所で起きやすいという傾向があります。
できるだけ部屋を明るくすることが、予防に繋がります。
また、カーテンなどが複雑な模様や柄の場合は、虫や人がいると勘違いすることもあります。
お部屋のインテリアは幾何学模様などの柄物は避けて、単色のシンプルな物がベターです。
シミなどにも気をつけてあげましょう。
もしも、幻視が現れて「誰か、そこにいる」などと言った時は、「そんな人が居るわけがないでしょ!」などと、頭から否定するのはNGです。
現に、本人には確かに見えているのですから。
対象物を触りながら「ほら、何もないでしょ。大丈夫よ。見間違えたのかな?」等と説明するとか、一緒に手を繋いでその場所に行って、誰もいないことを確かめて理解を促すようにしましょう。
このような対応を繰り返して、幻視を抑える薬を服用することで、見えるはずのない物が見えるという訴えは減って行くことが多いです。
<幻視や睡眠中の大声がある時は、どうすればいいの?>
幻視や睡眠中の大声だけでは、認知症だと思う人はほとんどいないでしょう。
まずは、レビー小体認知症のことを知っておくことが、先決です。
レビー小体型認知症が疑わしい場合は、専門的な医療機関を受診することをおすすめします。
物忘れ外来や、認知症疾患医療センター、認知症サポート医のいる医療機関、日本認知症学会認定医がいる医療機関などを受診するのが理想的です。
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