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認知症で現れる症状には、中核症状とBPSDと呼ばれる症状があります。
中核症状は、認知機能の低下によって起きる物忘れや場所や時間の感覚が分かりにくい、言葉が出てこない、物ごとが上手くできなくなるなどの症状です。
一方のBPSDは、行動・心理症状や周辺症状と呼ばれることもあり、BPSDが起こらない人も少なくありません。
またどんどん進行していく症状ではなく、周囲の対応次第で改善することが多いのが特徴です。
しかし、家族や介護者の悩みの種になりやすいのは、中核症状よりもBPSDです。
目次
【BPSDで見られる症状】
■暴言・暴力
BPSDでよく見られる症状の1つに、暴言や暴力があります。
今までは穏やかだった人が、暴言を吐いて怒鳴ったり叩いたりすると、周りの人の戸惑いも大きいでしょう。
物事には全て何らかの理由や原因があるのと同様に、暴言や暴力にも本人なりの理由があるはずです。
認知症になるとできないことや分からないことが増えてきます。
そのため、それに対する不安や焦りや孤独感などが募って、怒りっぽくなっているのかもしれません。
■妄想
妄想もしばしば見られる症状です。お金を盗られたとか家の中に知らない人が居る等が一例でしょう。
記憶があいまいになって来ると、喪失感が漂ってくるので、これが関与していると言われています。
■徘徊
徘徊も家族や介護者を悩ませるBPSDの症状の1つです。
ドラマなどでも、勝手に家を出て行った老人を家族が探し回るシーンなどがよく出てきます。
徘徊は、場所や時間の感覚が鈍くなってきたためだと考えられています。
「早く家に帰って夕食の支度をしなければダメだ」などと思う気持ちが湧いて来て外にでてしまうようです。
このような気持ちが掻き立てられるというのは、本来のその人らしさの表れかもしれません。
徘徊するのは何らかの目的があって外出して、その結果、道に迷っているのです。
■入浴拒否
入浴を拒否するという事もよくあります。
入浴する際は、段差のある所を通ってお風呂場まで行ったり、服を脱いだりなどの段取りが色々とあります。
これらの段取りが負担に感じることが、嫌がる理由になっているケースも多いです。
高齢になると肩が痛いなどで、服を脱ぐときに苦痛を伴う人も少なくありません。
入浴が嫌だというよりも、腕を上げて服を脱ぐのが嫌だというケースもあります。
■トイレを失敗してしまう
ポータブル便器を嫌がって自力でトイレに行こうとするのだけど間に合わなかったり、紙おむつの中に排尿してくれればいいのに途中で脱いでしまったり、トイレではない場所で排尿したりという失敗もあります。
家族は後始末が大変だし、お孫さんがいる場合は匂いの問題も悩ましいでしょう。
本人はすごく傷ついているのですが、お互いに大きなストレスとなっていることも多いです。
トイレの場所が分からなくなっていたり、足が弱って来てトイレに到着するまでに時間がかかる、ズボンやパンツを脱ぐのに時間がかかるなどが関係しています。
私の母も、どこに居てもわざわざ遠回りしてまでいつも同じルートでトイレまで行くようになったので、「どうしてわざわざ遠回りをするのだろう?」と不思議でした。
今考えると、場所の感覚が鈍くなってきて1ルートしか認識できなかったのかもしれません。
薬の副作用で失禁しやすくなることもあるので、その可能性が考えられるときは、主治医に相談して薬の変更なども考慮すると良いでしょう。
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【BPSDへの対応】
BPSDの症状には、認知症の人を取り巻いている人間関係や環境が影響していることも少なくありません。
これらを調整することで、症状が改善することも多いです。
私の母は転院したとたんに、BPSDが良くなりました。
前の病院では高齢の介護士や看護師ばかりで、暴言などもあったようです。
しかし、転院後の病院では若い男性介護士も多く、余裕を持って介護や看護が出来ていたように思います。
BPSDの症状への対応で重要なのは、「どうしてこんなことをするのだろう」と、少し立ち止まって理由を考えてみることです。
暴言を吐かれたり叩かれたりすると腹が立ちますが、ちょっと深呼吸でもして「どうしてだろう」と考えることが重要です。
この、「ちょっと立ち止まって理由を考えて見る」というのはアングリーマネージメントでも良く言われることなので、職場の人間関係の改善や家族との関係を改善するのにも役立つでしょう。
■物を盗られたという妄想があるとき
物を盗られたという妄想がある時に、真っ先に疑われるのは一番身近な人です。
疑われた人はつらい想いをしますが、最も信用している人を疑う傾向があるので、そのことを覚えておくと良いでしょう。
以前私は、姑が「鉛筆が1本なくなった。泥棒が入った」と言っていた時に、「鉛筆を1本だけ盗んでいく泥棒が、どこにいるの?そんな物を盗んで、何の得があるの?」と否定してしまいました。
しかしこれは、良くない対応の一例です。
強く否定したり言動を非難したりしないで、「鉛筆がなくて困っているのね。じゃあ一緒に捜そうか」などと言うのがベターだったと思います。
その時に、介護者が「ほら、ここにあるじゃないの」などと見つけてしまうと、「隠していたんだ」等と思うこともあるので、患者さんが見つけやすい場所にそっと移動させて、本人自身に見つけてもらうのが賢明でしょう。
■徘徊があるとき
場所や時間の感覚があいまいになってきたことが徘徊の原因のベースですが、それ以外にも本人なりの理由があって、徘徊しているのだという事を理解しましょう。
徘徊したいというよりも、何らかの理由があって外出したいのです。
しかし結果的には道に迷ってしまって徘徊するということになってしまうようです。
まずは、どうして外出したいのか理由を聴きましょう。
そして「今日はもう外が暗くなるから明日にしたら?」とか、「お天気が良くないから晴れている日にしたら?」などと、日時の変更を提案するのも一方法です。
中には5分程一緒に歩いたら、「やっぱり帰る」と自分から言うケースも少なくありません。
子どもの頃の友達に会いに行きたいなどと言う時は、デイサービスや認知症カフェを利用して話し相手ができると、家では落ち着きを取り戻すこともあります。
■幻覚が見える時
明るい部屋から暗い部屋に移動したときなどに、幻覚が見えることが多いです。
レビー小体型認知症では、物忘れよりも幻覚が目立ちます。
「誰もいないわよ。そんな人がいるわけないでしょ」などと強く否定すると一層混乱してしまうので、「知らない人がいたら、不安だよね」などと、まずは不安な気持ちに共感しましょう。
触ろうとしたり声をかけたりすると幻視は消えることが多いので、一緒に近づいて触ってもらって誰もいないことを確認するなども一方法です。
また、カーテンなどの部屋のインテリアは複雑な模様よりも、単色の方が虫などと見間違うことは少ないでしょう。室内の明るさを一定にすることも大切です。
■失禁した時
トイレの失敗がが多くなって叱られたりすると、汚れたパンツを隠してしまうこともあります。
失禁すると本人は凄く傷ついているのだという事を、まずはしっかりと認識しておきましょう。
本人もつらいし、介護する人もつらいと思います。
後始末をしながら涙が出てしまうことも多々あると思いますが、気持ちを上手に切り替えることが大切です。
時には、デイケアなどに預けて一人カラオケにでも行って大声で叫んでみるとか、趣味に没頭する時間を作るなどして、ストレスを溜めないようにしましょう。
【まとめ】
まずは、本人の声に耳を傾けて話を聴きましょう。
物事にはすべて理由があるはずです。
理由が分かれば、介護する人も随分と楽になって来るし、認知症の人が傷ついていることにも共感できるので、それがBPSDの改善にも繋がっていきます。
BPSDが改善すればプラスのスパイラル(連鎖)となって、認知症の人も介護者も楽になっていくでしょう。
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