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目次
薬に対する誤解を改めよう
<そんな薬は飲まない方がいいよ、などと言ったことはありませんか?>
現役の看護師さんや介護士さんであっても、薬に対する誤解を抱いている人は意外と多い印象があります。
一般の人は、看護師さんや介護士さんに「そんな薬は怖いから飲まない方が良いよ」などと言われると、結構信用してしまいます。
もう20年以上も現場から遠ざかっている自称元ナースの言う事でさえ、一般人は信用する傾向があるのです。
私から見れば、今の医学は刻一刻と進歩しているので、5年勉強していないだけでも、昔の知識など役に立たないと思うのですが・・・
薬の誤解の中でも多いのが、ステロイドや抗ガン剤に対する勘違いです。
(ステロイドの商品名には、プレドニンやメドロール、コルヒチン、塗り薬だとリンデロン、ロコイドなどがあります)
未だに、「ステロイドは怖い薬だから飲まないほうがイイよ」、「そんなものを飲み始めたら副作用で体がボロボロになるよ」などと、友達にアドバイスをする看護師もいるので、本当に困りものです。
ステロイドは70年以上の歴史
ステロイドが誕生したのは、今から70年以上も昔の話です。
1948年にヘンチ博士が、関節リウマチの少女に使いました。
今まで寝たきりだった少女が、翌日にダンスを踊ることができたのです。
このニュースは瞬く間にセンセーションとなって、「魔法の薬」「夢の新薬」と報道されました。
しかし後に、使い方を間違うと恐ろしい副作用もあることも分かったのです。
これをマスコミが勝手に「使い方を間違うと」という部分を省いて、実は恐ろしい薬だったという感じでスクープしました。
思いっきり上げておいて一気にドーンと突き落とすのは、マスコミ特有のやり方なのでしょうか。
夢の薬や魔法の薬は一転して、恐ろしい薬となってしまったのです。
その後も「ステロイドは恐ろしい薬だ」と言う噂が独り歩きして、いまだにこのような古い知識を信じている人も少なくないようです。
その後、使い方を間違わなければ劇的な効果があることや、炎症を抑える作用は最強であることも分かってきて、使い方もずっと上手になってきました。
70年以上も使われ続けているのは、メリット>>デメリットと言う証でしょう。
500以上の疾患で使われている
ステロイドは、今では500以上の疾患で使われています。
どれくらいの量を使えばどんな副作用が出てくるリスクが高まるのかも、既に分かっています。
なので、予測できる副作用についてはあらかじめ予防薬を服用します。
医師が最も警戒するのは、骨粗鬆症と感染症です。
プレドニン換算で7.5㎎(1錠半)以上×3か月以上を服用する時には、必ず骨粗鬆症の予防薬を使います。
近年は2~4週間に1回の服用や筋肉注射でOKのものや、6か月に1回の皮下注射でOKのものも出てきました。
プレドニン換算で20㎎(4錠)を20年以上服用していても、副作用は何も出ていないという患者さんもおられます。
感染症は、プレドニン換算でトータル700㎎以上となるとリスクがアップするので、予防薬の服用を考えます。
ムーンフェイス
患者さんが嫌がるのが、ムーンフェイスと呼ばれる副作用です。
満月(ムーン)のような真ん丸の顔(フェイス)になってしまう副作用です。
女性の場合は、やはり外見の変化は気になるところでしょう。
しかし、どこからどう見てもムーンフェイスではなく、年齢相応の顎のたるみを「ステロイドの副作用で、ムーンフェイスになった」と嘆く患者さんも少なくありません。
このムーンフェイスも、薬の量が減って行けば必ず元に戻ります。
ステロイドを飲むと、今まではだるくて食欲がなかった人でも元気になって食欲も出て来るので、ついつい食べ過ぎてしまうケースが多いです。
体重が増えると、増えた分が顔に付きやすいので、ムーンフェイスになってしまいます。
ムーンフェイスを防ぐには、体重をむやみに増やさないことが大切です。
全員に副作用が出るわけではない
今は多くの人が、ネットで薬の副作用を調べます。
そしてムーンフェイスとか骨粗鬆症とか高血圧などと記載されてあると、100%その副作用が自分にも出るかのように受け止めている傾向があります。
しかしムーンフェイスは、大量に(プレドニン換算で1日30㎎以上)飲めば、ほぼ必発しますが、10㎎(2錠)までなら出現率は10~20%ほどです。
高血圧や骨粗鬆症も、1日10㎎以下なら2%以下だと記載されています。
また1週間や2週間と言った短期短期間だけ1~2錠使用する程度では、副作用の心配はほとんどありません。
情報は「いなかもち」を確認しよう
週刊誌などには、「こんな薬は飲まない方が良い」などという特集を組んで、恐ろしい薬だという書き方をしていることもしばしばあります。
しかし、薬は、メリットとデメリットを天秤にかけて、メリット>デメリットだと判断されたときに使います。
使うべきときにはむやみに怖がらずに使うのが、良医や名医と呼ばれている医師でしょう。
あなたにとって、メリット>デメリットだからその薬を使っているのです。
抗がん剤もステロイドと同様で、今では決して怖いだけの副作用だらけの薬ではありません。
麻薬系の痛み止め(モルヒネやオピオイド)を使うと廃人のようになってしまうという話も、とんでもない誤解です。
それは50年ほど前のことで、今はそのようなことはありません。
色々な情報に踊らされがちですが、情報を見る時は「いなかもち」を確認しましょう。
看護師や介護士だからと、いい加減な情報を友達や親せき等にアドバイスするのは良くないことです。
い:いつの記事か?
5年前や10年前の記事では、古い内容です。
な:何の目的で書かれた記事か?
商品の広告と言うケースも多いです。
か:書いたのは誰?
どこの誰だかよく知らない人の言う事と、あなたのことをよく御存知の主治医の言う事と、どちらを信じるのが賢明でしょうか?
も:元ネタは?→出典はどこか?
個人的な想いでしかないこともあります。
ち:違う情報はないか?
全く反対のことを述べている情報がないか、調べてみるのが賢明です。
看護師や介護士が患者さんが服用している薬に対して「この薬は副作用が多いから、やめたほうが良い」などと言うのは、絶対にやってはダメなことです。
もしも患者さんが副作用で悩んでいるのなら、「そんな薬は飲まないほうがいいよ」ではなく、副作用で困っているという事を主治医にきちんと伝えられるように援助しましょう。
これはステロイドだけではなく、それ以外の全ての薬でも同様です。
参考書物:川合眞一:編
「研修医のためのステロイドの使い方のコツ」
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