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目次
ユマニチュード
介護をしていく中で、時にはイライラを感じたり、「何かうまく行かない・・・」と感じることもあると思います。
どうしたら、もっと寄り添えるのだろうかと日々悩んでいるという人も多いでしょう。
近年、認知症の新しいケア方法として「ユマニチュード」という言葉を、しばしば耳にすることが多くなりました。
この「ユマニチュード」の考えが、あなたのお悩みを解決するヒントになるかもしれません。
ユマニチュードとは、どのようなケアなのかは、以前の記事を見れば分かるでしょう。
しかし、このユマニチュードを実践するのは、現在の忙しすぎる現場では容易ではなく、「絵に描いた餅だ」という人もいるようです。
実践するのは困難なのでしょうか?
実践可能なのか?
ユマニチュードでは、「忙しいから、歩ける人だけど車椅子で行ってもらおう」や、「転ぶと危険だから」などはNGです。
忙しさや人手不足や危険を理由に強制的なやり方をしない!を目指しています。
歩けるのであれば、たとえ時間がかかっても歩いて移動してもらい、極力車椅子は使わないようにします。
途中まででも歩いて行き、途中から車いすで移動するなどはユマニチュードではよく行われている方法です。
しかし、それでなくても人手の足りない介護現場では、時間がかかっても歩いてもらうというやり方は非現実的だと言う声が出るのも、私は分かります。
また、転倒して骨折などしようものなら、家族から文句を言われ最悪の場合は訴訟問題にまで発展する可能性もあります。
骨粗鬆症患者ではなく、「即訴訟症患者」などと言う言葉もあるくらい、今はモンスター患者やモンスター患者家族も増えています。
そしてまた、患者さん自身も骨折したのでは非常につらい思いをしてしまいます。
実施するときは、メリットとデメリットを天秤にかける必要も生じるてくるでしょう。
どうしても急ぐ時には無理をせず、時間がある時にゆっくり歩いてもらうというのも一方法だと思います。
また、転倒して骨折などすれば、元も子もないので、そういったリスクを回避する方法も事前に確立しておく必要があります。
そのあたりの判断が難しいところでしょう。
担当を変えてもらうことは可能か?
ユマニチュードでは、「あなたのことを大切に思っています」というメッセージを最期まで伝え続けることを重視しています。
介護や看護をしていると、この人のことはどうしても好きになれない、という事もあるかもしれません。
相性が合わないと感じることもあるかもしれません。
そんな時は勇気をもって「●●さんの担当を外してほしい」と申し出ることも必要です。
介護する人と介護される人の間でトラブルがあった場合は、一時的に距離を置くのです。
そして、アングリーマネジメントの研修なども必要でしょう。
また、腹立たしい言動は●●さんの言動ではなく、病気がそうさせていると思ってはどうでしょうか?
しかし、実際には担当を外すことや一時的に距離を置くという事が困難なケースも少なくないでしょう。
ご家庭で介護をされている場合、代わりの人がいない、というケースもあるし、介護現場でも夜勤の場合はギリギリのスタッフで回しているので、担当など関係なく全入居者を見ないといけない、という事も多いでしょう。
ユマニチュードの4つの柱
見る、話す、触れる、立つ が4つの柱です。
①見る
正面から、水平に、近い距離で見つめます。
水平は平等を意味し、正面は正直や信頼を、近い距離は優しさや親密さを、時間の長さは友情や愛情を示すとされています。
「●●さんの顔を見ると、私すごくホッとするの」と言われるような、介護者や看護師になりたいですね。
しかし、私はこの「正面からじっと見る、近くで目の高さを合わせて見る」には、少々疑問点があります。
心理学では向かい合って見つめるのは、敵対心がある時だという記載もあります。
相撲の取り組みの際は、向かい合って見つめ合います。剣道の試合の時に、両者がじっと見つめ合っていることがあります。
これは敵対心の現れです。
そして私には、次のような経験があります。
私は主治医に、じっと正面から近距離で見つめられた経験があるのです。
私もじっと見つめていましたが、なんだか恥ずかしいと言うか、主治医からの優しい視線に耐えられなくなってしまって、私の方が先に視線をそらせてしまったのです。
別に恋心などはありませんよ。
でもあまり見つめられると「惚れてまうやろ!」と多少は思いました。
もしかしたら私は元々、人の視線が苦手なのかもしれません。
人と視線を合わせるのが苦手な人って、少なからずいますよね。
また、身長が高い男性や太っている人の顔はデカいです。
そういう人に見つめられた時は、心の中で思わず「顔、デカっ!」と言っていました。
優しい笑顔だったのですが、顔のデカさが圧迫感と言うのか少し怖いと言うか、嫌でした。
顔のデカい人に見つめられると、私の場合はちょっと怖いです。
これらの経験から私個人の見解としては、あまり近距離で正面からじっと見つめるよりも、やや斜めくらいからの方が良いのでは?と思うのですが、皆さんはどう感じたでしょうか?
②話す
話す時は、ポシティブな言葉を使うことが重要です。
穏やかに優しいトーンで歌うように話しましょう。
返事がない時は、オートフィードバックという技法を使います。
これは、実況中継だと思うとOKです。
「温かいタオルを持ってきますね」「温かいタオルですよ」「気持ちの良い顔されていますね」などと、実況中継をするのです、となっています。
利用者や患者さんとうまくコミュニケーションが取れない時は、まずはこのように実況中継してみたらどうでしょうか?
そこから、もっと身近な会話へと繋がって行くかもしれません。
③触れる
広い面積で、掴むのではなく支えるイメージで!がポイントです。
手の平全体で広い面積をなでるように、優しく触れます。
いきなり触るのではなく、飛行機が着陸するように触れてください。
看護の「看」と言う字は手+目です。
手は大事にしたいですね。
アルコール消毒でガサガサに荒れた手は、ハンドクリームなどでしっかりとお手入れをしたいものです。
④立つ
立つことは、筋力低下や骨粗鬆症の予防にもなります。
また、誤嚥の予防やむくみの改善にも繋がって行きます。
高齢者は3日で寝たきりになってしまうこともあるし、3週間もあれば立派な寝たきりコースに突入です。
1日に合計20分立つことができれば、寝たきりを予防できると言われています。
1分だけでも立てるのなら、近くに椅子を置いておいて、立つと座ると組み合わせて合計10分や20分のケアも可能になることがあります。
たったの1分でも、その間に清拭や着替えなどの一部分だけでも行うと良いでしょう。
歩くのを嫌がる人の中には、「その靴で転倒したことがあるから」といった苦い経験エピソードが背景に隠れていることもあります。
靴を変えるだけで歩くようになった、という事例もあります。
5つのステップ
ユマニチュードには5つのステップがあると言われています。
出会いの準備、ケアの準備、知覚の連結、感情の固定、再会の約束の5ステップです。
①出会いの準備
いきなり部屋に入るのではなく、扉のノックは大切です。
ノックの音を聞くと、脳が会うための準備をするようになってくるからです。
スタッフが部屋に入る前に、誰が来たのかを当てることができる患者さんがいました。
足音やノックの仕方で、誰なのかが分かるそうです。
また、忙しいかどうかもノックの仕方で分かった、という患者さんもいました。
同じようにノックしているように思えても、患者さんは敏感ですね。たかがノック、されどノックです。
②ケアの準備
すぐに「お風呂ですよ~」ではなく、まずは会いに来たというメッセージを発しましょう。
それから、ケアの提案をポシティブな言葉で行います。
「今日は寒いからお風呂に入って温まりませんか?」などと伝え、3分以内にOKがなければ、強行しないでいったん引き下がりましょう。
そして、またしばらくしてから提案してみると、OKとなるケースも多いです。
これも実際の現場では、難しかもしれないですね。
入浴を嫌がる人は多いです。
そんな時は、なぜだろう?という視点を持つことが大事です。
些細な理由が背景に隠れていることも少なくありません。
何か理由があるのかを聞いてみることが、近道のケースもあります。
③知覚の連結
見る、触れる、話す を使って、「あなたのことを大切に思っていますよ」という気持ちと連結させましょう。
④感情の固定
認知症が進行してきても、感情に使う機能は保たれていると言われています。
「なんだかあの人と話をすると、気持ちが温かくなるなあ」などの良い記憶が残る様にすることが大切です。
「今日の担当が●●さんでよかった」そういってもらえるような介護者やナースでありたいものです。
⑤再会の約束
「また来ますね」を伝えましょう。
痛い処置の後は「もう来なくてイイ」などと言われてしまうことがあるかもしれませんが・・・
ユマニチュードを受けた人の変化
たとえ20秒でも立てるのであれば立つことを心がけたところ、車椅子から立ち上がれるようになった、という例も報告されています。
「継続は力なり」ですね。
また、認知症の母親を介護している娘さんが、ユマニチュードの講習を受けて実際にやってみたところ、会話が増えてきたり物盗られ妄想が減って来たそうです。
実際に実践するのは困難かもしれません。
しかし、ユマニチュードというケア方法の方針である「あなたのことを大切に思っています」というメッセージを伝えるという事や、人間らしさという方針は、多くの人が共感するのではないでしょうか?
介護者が知っておくべきケア方法の1つですね。
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