在宅介護

認知症で徘徊する高齢者を地域ケア会議で対応した成功事例

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地域包括支援センター

私は、ある地域包括支援センターで社会福祉士として働いています。

人口4万人ほどの小さな町で、一つの中学校を圏域にして、日々高齢者の様々な相談に対応しています。

センターが開設してからもう12年経ち、私は開設当初からそこで働いています。

地域包括支援センターは介護保険を利用する時の最初の窓口ですので、認知症かな?どこの病院にいたらいいのだろう?という相談は絶えず入ってきています。

そんな地域包括支援センターは気軽に相談してもらえるように、地域の方には「なんでも相談です!」とうたっているので、本当に色々な相談が入ります。

近所のトラブルごとや犬の鳴き声、ゴミ屋敷問題から、先日は心霊相談まで入りました。

その一つ一つにしっかりと耳を傾け、然るべき機関に繋ぐのも重要な業務の一つです。

ある日、地域の民生委員のおじさんからこんな相談が入りました。

「毎朝子どもたちが学校に通う時間になると、下着姿で歩いているばあさんがいる。スクールガードのボランティアや父兄もどう声をかけていいかわからないし、子どもたちが怖がっている。」という内容です。

私はそれを聞いた時に、認知症を疑いました。

幸いその方を知っているという民生委員さんと、その方のお家に同行して、様子をうかがう事にしました。

地域包括支援センター

最初の対面

「地域の健康相談で回っています。お困りごとはありませんか?」と訪問したそのお家から、一見特に問題なさそうな80代のおばあさんが出てきました。

「おかげで、困ったこともなく、ぼちぼち暮らしていますよ。」とにこやかに答えられるそのおばあさん。

いわゆる世間話をそつなく話され、「お宅さん達も暑いのにご苦労様~」とお辞儀をされます。

民生委員さんは、あれ?というような顔をしています。

これで、この訪問は終わってしまうかなぁ、勘違いかな、と思ったその時、部屋の奥から男性(おそらく夫)が、両手を合わせてこちらを拝むように立っているのです。

認知症の人の特徴的な言動として、取り繕う事がとても上手です。

自分は大丈夫、誰の世話にもならない、という強い意志がヒシヒシと伝ってきます。

しかしそれは、自分が認知症かもしれない、こんな自分を誰かに見られたくない、という不安の裏返しでもあります。

今まで出来ていたことが出来なくなった、さっきまでしていたことを忘れてしまったという「忘れる」という恐怖を感じているのは、誰でもなく本人自身なのです。

ですから、認知症の人に関わるときの最優先ルールはその人の意志を受け止め、尊厳を守るという「基本であり最も重要な基本姿勢」なのです。

つまり本人の言動を「否定しない」という事です。

ありもしない事、事実と違う事を平然という人があります。

しかし、それは当人にとってはいつでも現実なのです。

徘徊

家族への聞き取りがポイント

その日の訪問はそれで終わりましたが、夫と個別にお話を聞く必要性を感じていたので、事業所に戻ってから電話をしました。

案の定、妻の不可解な行動に戸惑っていた夫。

長い間、夫婦二人で暮らしてきたそうですが、近所との関係も薄く、相談することも出来なかったと話されました。

そして、毎朝夫の制止を振り切って下着姿で誰かを探す為、近所を徘徊していることについても、どうしていいか分からなかったと話されました。

国は高齢社会を迎えた日本で、介護サービスや医療サービスだけで受け止めることは限界だという現実を見据えて「地域包括ケア」というお題目を地域に投げかけています。

これは、自分が自分らしく、住みなれた地域でいつまでも暮らすことが出来る社会を目指しています。

そのためには公的サービスだけでなく、隣近所などのインフォーマルサービスの関わりも欠かせません。

相談に上がったこのおばあさんのケースも、認知症という病気を本人や家族だけでは支えきれず、様々な支援が必要な状態となって、とうとう露呈したという事なのです。

地域包括ケアの特効薬

地域包括ケアを具体的に実践するために有効なのは「地域ケア会議」です。

これは以前医療や介護の業者だけで行われていた個人カンファレンスに、地域の住民や資源をさらに巻き込んで地域全体で一人を支えるための作戦会議です。

早速、地域ケア会議のメンバーを考え招集しました。

まず夫、民生委員さん、隣近所で来れる人、スクールガードボランティアの代表者、市の保健師、ケアマネジャー、地域包括の職員です。結構な数になりますが、それぞれに大切な役割や理解が必要ですので、誰が欠けてもいけません。

介護の冒頭、夫から本人の紹介をしてもらいます。

年齢や日頃の行動、困っている内容や近所に迷惑をかけてて本当に申し訳ない、という気持ちをぼそぼそと憔悴しきった様子で話しました。

すると、隣に住んでいる人も「なんとなくわかってましたよ、相談してくれたらいいのに。私も昔姑を介護してたので、苦労はわかるわ」。

すると夫の顔が少し緩み、半分泣き顔の様になりました。

スクールガイドのボランティアさんが以前、おばあさんに話しかけた時、こう答えられたそうです。

「夫がどこかに行ってしまった。ずっと探しているが・・。」ととても不安な顔をしていた、と。

つまり徘徊ととらえていた本人の行動は、夫を探す、という本人なりの目的がきちんとあり、そのために身なりをかまわず近所をあるいていた、ということが分かりました。

それが分かると、今後の対応方法が定まります。

つまり、必死で夫を探している、という本人を見かけたら、夫は家に帰っているから戻ってみたら?という声かけが有効になります。

またそれでもいう事を聞かなかったらどうするか、という時には、民生委員や地域包括支援センターが対応することを確認しました。

隣近所の人やスクールガードの方からは、「それくらいだったらできる。他に何を頼まれるのかと思った」を安心されたように言われました。

そして、今後治療についての方針も決めました。

保健師が認知症専門病院と連携して、受診をサポートし、治療や服薬について経過を観察していく。

同時に介護保険のサービスを利用するために、ケアマネジャーが申請の手続きを行う事も決まりました。

地域ケア会議

地域ケア会議は役割決め

こうして、公的なサービス機関や隣近所の人の支援も受けることが決まり、無事治療も開始されたこと、介護認定もおり、週に2回デイサービスに行って知人とお話しすることが、生きがいになったことなどを聞きました。

最後に、朝から夫を探し回る行動はどうなったのでしょう。

夫は、今まで別々に寝ていた寝室を一つにして、おばあさんの隣で就寝することにしました。

当初は、室内でうろうろしていたおばあさんに、「どうした?」と尋ねると「夫がいないんです」と答えるので、「ここにいるよ」というと、安心した顔をされたり、ある時は、寝ている夫を跨いで、外に出ようとすることもあったそうですが、説明すると納得されることも増えてきたといわれました。

おそらく、認知症にとっては適切な治療を行う事も大事ですが、このケースの場合、周囲の対応が薬以上に効果を発揮して、本人の不安に寄り添い上手に生活がサポートできているのだと思います。

このケースに限らず、認知症という病気はこれといった治療方法が定まっていません。

しかし確実に言えるのは、周囲の対応一つで症状が良くも悪くもなるということです。

地域包括ケアは、地域を巻き込むといいましたが、このケースの様な日常できる些細なことで構いません。

隣近所で声を掛け合う事も最近では乏しくなっている、という実態がこんな田舎でも広がっているのです。

そんな当たり前のことをわざわざ国に言われて気づかされているこの社会こそ、本当は問題なのかもしれません。

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