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目次
ナラティブライティング
ある大学の介護学科の学生が、実習時に違和感を覚えたシーンを思い出して、その時の気持ちを書いてみるというナラティブライティングに取り組みました。
実習生が違和感を感じているという事は、ご家族がもしもそのシーンをみたら、その何倍も何十倍も違和感を感じるでしょう。
実習生が違和感を感じたというシーンが、現場では当たり前になっていないか見直してみましょう。
オムツに排尿
ナースコールが鳴り響いて、ナースも介護スタッフもバタバタと廊下を行き来している時に、「トイレに連れて行ってください」とAさんからナースコールがありました。
Aさんは自宅で転倒して大腿骨骨折を負い、手術後は医療療養病棟に入院中の患者さんです。
少し介助をすれば、歩いてトイレに行き自力で排尿することはできますが、時間がかかるので時々間に合わずに失禁してしまいます。
なので、念のために紙オムツを当てています。
ナースコールを取ったナースの対応は「Aさん、オムツ当ててるでしょ。オムツにしてください」でした。
実習生は物凄くびっくりしました。もしも自分がそんな風に言われたら、すごく嫌だ…と思ったようです。
ベルトコンベヤーだ
浴室前の廊下に、車いすに座って並んでいる入居者が3~4人程います。
それだけなら何も衝撃は受けなかったかもしれませんが、車いすに座っている入居者の服装に実習生はビックリしたようです。
陰部をタオルで隠しているだけで、全員が全裸でした。
実習は冬だったので、中には「寒い、お風呂なんて入らなくてもいい。もう嫌や、病室に帰りたい」と言っている入居者もいたそうです。
実習生が先輩に「何も素っ裸で廊下に並ばなくても…」と言うと、「そりゃあ私だって一人一人丁寧にやりたいわよ。でも、そういうやり方をしたら夜中までかかるよ」と言われたそうです。
その施設では、病室で全裸にして車椅子に乗せてタオルを渡すそうです。
入居者は恥ずかしいのでタオルで陰部だけは隠します。
そして、その姿のまま廊下を通り、浴室の前の廊下で入浴の順番を待つのです。
1人が部屋に戻ってきたら1人が全裸になって廊下に並ぶという感じで、「まるでベルトコンベヤーみたいだった」と語っていました。
施設によっては、その階に浴室がなくて全裸のままエレベーターに乗って移動するという所もあるようです。
建物の構造上の関係で、そうするしか方法は無いのだろうか?とショックを隠せないようでした。
また、機械浴の患者さんを見て「人間フライドポテト」みたいに見えたと、ナラティヴライティングには記載されていました。
実習生の言うフライドポテトとは、ファーストフード店のフライドポテトのことです。
編みザルのような物にポテトをいれて、ザブンと油に浸けて時間が来たらそのまま引き上げます。
このポテトが人間に変わっただけ、油がお湯に変わっただけのように見えたのでしょう。
認知症だから
車椅子に座った患者さんが廊下でスタッフに「すみませーん」「あのー」などと言って声をかけているのですが、スタッフは誰も相手にしていません。
どのスタッフもバタバタと廊下をあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていて忙しいのは分かるけど、「無視するのは気の毒すぎる」と実習生は思いました。
そこで実習生はその患者さんのところへ行って横にしゃがみ込み、「どうしたのですか?」と聞きました。
その時それを見ていたベテラのスタッフは「その人、認知症だから」と言ったのです。
「えっ?」と実習生が聞きなおすと「認知症だから聞かなくてイイよ」と言ったそうです。
認知症だから話を聞かなくてイイってどういうこと?認知症だからこそ、話を一生懸命に聞いた方がいいのではないの?と頭の中が混乱した、とありました。
お粥の中に全部ごちゃ混ぜ
食事介助の時にベテランの介護スタッフが、お粥の中に煮魚とホウレン草のゴマ和えと味噌汁を入れてグルグルと混ぜて、スプーンで口に入れていたのを見た実習生が「餌じゃないのだから」、「これじゃあ味がごちゃ混ぜだ」とびっくりしたようです。
煮魚とゴマ和えくらいならまだしも、そこに酢の物も入れて混ぜたり、味噌汁まで混ぜたのでは食事という感じではなくなるでしょう。
理由はあるけど
実習生が違和感を覚えたというのも、無理のない話だと私は思いますが、これが当たり前になっている介護施設や病院も少なからずあるのではないかと残念です。
実習生が覚えた違和感の根源は「人間らしい扱いをしてもらっていない」という事でしょう。
どうして、このような扱いになってしまうのでしょうか?
「一人一人丁寧にやっていたら、入浴が夜中までかかってしまうよ」と言われたようですが、人手が足りずに他に方法がないという現実もあるのでしょう。
食事も全部混ぜてしまった方が、最低限のバランスだけは確保できるのかもしれません。
また、その方が食べさせるのに時間がかからないのかもしれません。
違和感を覚えた実習生は、胸を痛めながらも指示された通りに対応したようです。
このような現場の実情にショックを受けて、看護職に就くことや介護職に就くことを辞めてしまう人もいます。
しかし中には、いつしか慣れてしまって胸も痛まなくなり違和感を覚えなくなっていく人もいます。
胸を痛めながら行うのと、それが当たり前になってしまうのとでは大きな違いがあります。
当たり前になると、本当は改善できる方法があるのに誰も改善方法を考えなくなってしまうのです。
実習生が違和感を覚えるという事は、ご家族が見たらその何十倍も違和感を覚えるでしょう。
ご家族のいる前で「オムツにしてください」と言えますか?ご家族に素っ裸で車椅子に座ってい姿を見せることができますか?と綴っている実習生がたくさんいました。
理想論かもしれませんが、自分たちは非常識なことをしているという自覚くらいは、せめて持っておくべきです。
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