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目次
高齢者の低体温症による凍死
夏に高齢者が室内で熱中症になって亡くなるリスクが高いことは、すでに知られているかと思いますが、冬に高齢者が室内で凍死するというケースはあまり知られていないのではないでしょうか?
凍死と聞くと、雪山で遭難したのかと思う人も多いかと思いますが、部屋の中でも凍死してしまうことがあるのです。
医学的には、18.3℃以下の室内に長時間居ることで、低体温症から凍死に至る可能性があることが分かっています。
厚労省の人口動態統計によると、毎年1000人くらいの人が低体温症による凍死が原因で亡くなっています。
これは、夏に熱中症で亡くなる人の1.5倍以上にもなります。
低体温症で救急搬送された人を調べたところ、約70%以上の人が室内での発症でした。
<低体温症>
低体温症は、直腸体温や膀胱温などの深部体温が35℃以下になった状態です。
体温が34~35℃くらいの時:
意識は正常。ふるえが有るが、心電図には異常は見られないでしょう。
体温が30~33℃くらいの時:
意識状態は、周りに無関心になり「ふるえ」がおさまる。
心拍数が低下し、心電図にも異常が見られる。
呼吸も浅く遅くなってきて、
消化管は動きが鈍くなりイレウスになります。
体温が33℃以下になると、ICUで呼吸や循環動態を管理する必要があると言われています。
すぐに救急車を呼んでください。
上記はおおよその目安なので、状況や年齢や基礎疾患の有無等によって多少の違いはあります。
<低体温になりやすい人>
・糖尿病がある人
・脳梗塞などがある人
・心臓病や内分泌疾患などがある人
・高齢者や小児
・栄養不足や疲労
・水分不足
高齢者は低体温症になりやすい
高齢者の中には平熱が35℃代という人も少なくありません。高齢になると体温が低くなりやすいのですが、それはどうしてなのでしょうか?
・筋肉量が少ない
高齢者は若い人と比べると筋肉量が少なくなります。筋肉には熱を生み出す作用があるので、筋肉量の低下は低体温となりやすいのです。
・血管が硬くなる
寒い時は交感神経が働いて血管を収縮させて体温を維持しますが、高齢になって血管が硬くなると、これが上手くできなくなります。
・感覚が鈍くなっている
医学的には室温が18.3℃以下になると、低体温症の症状が出て来ると言われています。しかし高齢者は、自分の体調の変化に気が付きにくいことが多いのです。
・冷暖房が嫌い
高齢者の中には、「暑い時はこれ以上服を脱げないけど、寒さは衣服を着れば済む話だ!」「寒ければ体を動かせばいい」等と、寒い部屋の中で暖房をつけることなく過ごす人もいます。
糖尿病の人は要注意
糖尿病の人は、手足の血管を収縮する力が衰えていて、寒さにさらされても体温のコントロールが上手くいかずに、低体温症になりやすいことが分かっています。
また、低体温症になるとインスリン分泌が悪くなりやすいので、糖尿病性昏睡のリスクも高まります。
さらに、自律神経障害のある糖尿病の人が低体温症の状況下で低血糖を起こすと・・・これを考えるとゾッとしてしまいますね。
夏の熱中症だけではなく、冬の低体温症にも要注意です。
体温計は信用できるか?
私はこの夏、次のような経験をしました。
大汗を掻いている時に、ショッピングモールの入り口で非接触性の体温計(おでこに体温計を近づけて測定するタイプ)で検温されたところ、エラーで表示されたのです。
おそらく汗の温度に反応したのだと思って、汗を拭いて測定し直したら、36℃でした。
このケースのように、体温が低い場合は家庭用の体温計では「エラー」で表示されるケースが多いと思います。
そもそも家庭用の体温計は、発熱しているかどうかを確認するための道具です。そのため、体温が低すぎるのではないか?と確認したい時には、不向きだと言っても良いでしょう。
では、低体温症の兆候をどのようにして判断すればよいのでしょうか?
低体温症の症状
体温が低い場合、体温計で正確に測れるかどうかわかりません。それならば、症状から低体温症をいち早くキャッチする必要があります。
低体温症の症状についても知っておきましょう。
体温が35℃以下になると低体温症ですが、「ふるえ」はその少し前から起こります。
ここで気づいて保温できると良いですね。
しかし、33℃以下になった場合は「ふるえ」が治まります。
「震えていないから大丈夫」では無いのです。
これをしっかりと認識しておきましょう。
その他にも
・手足が冷たい
・顔色がピンク色で腫れぼったい、皮膚の色が蒼白い。
・眠そうにしている
・動作がスローで歩き方がおかしい
・呼吸が浅く遅い
これらに気づいたらすぐに救急車を呼んでください。
おじいちゃんだけを残して、朝から家族でレジャーに出かけて夕方に帰宅したら、寒い部屋でおじいちゃんが意識もうろうとなっていた、と言うケースもあります。
高齢者が低体温症となると、死亡率はおよそ50%と言われています。
上記のように、寒い部屋で倒れいていたといった場合は、できるだけ早く医療機関に搬送しましょう。
低体温症の予防
高齢者の場合、一度低体温症を発症すると死亡率が高いので、予防することが一番です。
◆部屋の温度は19℃以上を保とう!
医学的には18.3℃以下の部屋で長時間過ごすと低体温症となりえます。
◆厚手のソックスや帽子などで体を保温しよう。
部屋だけではなく、体も温めましょう。
◆糖尿病などはきちんと治療を受けよう。
自覚症状が無いからと言って、通院をサボってはダメです。きちんと血糖値をコントロールすることが、低体温症だけではなく様々な合併症を予防することに繋がります。
糖尿病だけではなく、心疾患や高血圧等の生活習慣病や持病のある人は、それらの疾患のコントロールが大切です。
◆十分な栄養や運動と休養
食べたものが熱になります。十分な栄養を摂りましょう。
運動をして筋肉量を落とさないようにすることも大切です。
そして睡眠や休養を十分に取りましょう。
「栄養・運動・休養」の3本柱が、ここでも重要になります。
◆声掛け
暖房代を気にして暖房を入れない高齢者もおられます。
「冷房、つけている?」と熱中症予防のために声をかけたのと同様に、「暖房、つけている?」「我慢しないで今日は寒いから、暖房を入れてね」などと声をかけるようにしましょう。
熱中症よりも多いのが室内での低体温症による凍死ですが、どのような症状があるのか等を知っておき、予防しましょう。
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