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目次
突然の出来事
近年、長期に渡って独居や近距離見守り家族がいる環境で生活していた方が、転倒による骨折や軽い脳梗塞をきっかけとして入院し、そのまま施設入所となるケースが当院では増えています。
こういった患者様の場合、家族は「いままで見守りが大変だったから、入院を機会に施設へ入ってほしい」という思いを持たれる場合が多いようですが、反対に患者様ご本人は「退院したらまた元の生活に戻りたい」という思いを持たれる場合が多く、意見の相違がかなりの場合発生してしまいます。
病院側としては、こうした意見の相違が生まれた場合、患者様ではなく、ご家族の意見を尊重してしまう場合が殆どです。
支援する側としては教科書に反する行為ですが。
結果として、施設入所後に患者様から「こんなところに来るとは聞いていない」「騙された」「こんなところに来るなら死にたい」とトラブルに発展してしまうという話を施設の方からよく伺います。
突然知らない場所へ
施設入所の際、施設の方は患者様から、病院職員(主に看護師)から、ご家族からお話を伺って資料作成をされている事が殆どだと思いますが、その際に自分の意思が反映されなかった場合の患者様自身のストレスマネジメント能力にもぜひ直目して頂きたいです。
長年に渡って一人暮らしをされてきた高齢者の方は、様々な方法で独自のストレスマネジメント能力を獲得しておられます。
しかし、中には自分のやりたいように気ままに生活して来られている方もおり、そういった方は家族との間に亀裂が生まれ、その亀裂が入院という出来事によって大きくなっている場合が多いように見受けられます。
これは、独居の方に限らず、同居家族、二世帯住宅同居家族や敷地内同居家族、であっても同様の事が言えます。
家族は患者様に半ば振り回されながらも、なすすべがないまま長い時間が経過しており、入院というイベントをきっかけとして患者様を同居から外そうと考えられるようです。
特別養護老人ホームやケアハウスのような形態の施設であれば、退所についての検討はそれほど視野に入れられない場合も多いかと思いますが、介護老人保健施設の相談員の方はかなり頭を悩ませる部分だと耳にします。
家に帰れないのはなぜ?
病院側としても、入所させて頂ける施設側に対してだまし討ちのような事はしたくはないので、患者様へ入所する予定もしくは入所する可能性のある施設についてはどのような場所なのかの情報提供は行わせて頂いています。
しかし、ご家族によっては施設へ行く事自体を患者様へは伝えないで欲しいと希望される方も少なくありません。
私が担当させて頂く場合には、そういったお話も施設側へはお伝えしていますが、入所判定の結果に影響を与えるからと秘密にするソーシャルワーカーや看護師も少なくありません。
早く受け入れて欲しい病院側、患者様を施設に入れたいご家族、どうしても家に帰りたい患者様、退所支援が出来るなら容易に行えそうな方を入所させたい介護老人保健施設の職員。
この関係性が病院から施設へ直接入所される方に関する転機先の調整のカギを握っているを言えます。
こういった点を踏まえて、少しでもスムーズに入所後の退所調整(この場合は介護老人保健施設の方が特に気になさる部分かと思いますが)進める為にはどのようにすれば良いのでしょうか。
患者様が施設入所を希望するか、もしくは納得しておられる場合においては、その理由を患者様ご本人にきちんと事前に確認しておく必要があります。
と言いますのは、家族への遠慮から家族のいうままに施設入所を決定した後で「こんなところとは知らなかった」と強いストレスを感じられて、職員への反発や家族への不信感に繋がり、結果としてトラブルになってしまう事が考えられる為です。
また、患者様は施設入所を希望していないが、ご家族が希望されている場合はどうしてご家族が施設入所を希望されるのか?ご家族から患者様を説得して頂く事は可能なのか?を確認する必要があります。
この場合、ご家族との関係性が構築出来ている病院スタッフがいれば、そのスタッフに協力してもらうのが理想的です。
関係性が構築できていない状況で上記について尋ねても、なかなかご家族の本音を聞くことは難しいと思われる為です。
こういった点を確認しておく事によって、ご家族と患者様の関係性も理解しやすくなります。
もしも、ご家族から患者様を説得して頂く事が難しい場合には、退所までの期間をあらかじめ説明して同意をとっておくのもよいかも知れません。
入所期間を明確化することで患者様の理解が得られる場合もありますし、施設側としても退所の話を切り出すタイミングを見図るストレスを軽減する事が出来ます。
またご家族にとっても施設入所に対しての患者様の理解が一定量得られる事に対しては安心の材料になるものです。
Win-Winの関係性
福祉施設への入所は賛否両論ある出来事で、きれいごとだけではすみませんが、送り出す病院側、受け入れる施設側、そしてもちろんご家族と患者様にとってベストとはいかなくてもベターな道であったと理解して頂く事が出来るように関係職種は今後も研鑽を積んでいく必要があると考えます。
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